おおきく振りかぶって 現9巻 ひぐちアサ アフタヌーンKC(2007回顧ベスト10)

→西浦高校の野球部は新入生ばかり10人、監督は若い女性。キョドる三橋の球を受けた阿部は言う。「後は、ボールをとってくれる野手と、1点入れてくれるバッターがいれば、甲子園へ行ける!」

おおきく振りかぶって (1)

おおきく振りかぶって (1)

タスクの多い出張の時に、リフレッシュ用で持って行ったのだけども、あまりに面白かったんで気になって仕事に支障を来たさないように事前に全部読んでしまったという(自分的に)いわくつきのマンガ。
やたら繊細で丁寧で爽やか、でも後方の作者目線は冷徹だと思う。

大雑把に言うと新設野球部10人が手持ちギリギリのカードで強豪校と戦う王道スポーツ漫画、主人公であるところのピッチャー三橋の「手持ちカード」(コントロール優で癖球、球威無し、性格難)を最大限活用するための心理・情報戦が展開されます。刻一刻と変化する試合描写がこと細かくて目が離せません。

ああそう、この時間と変化ってのは試合場面に限らずこの作品の最大の特徴だと思ってて、例えば試合外パートでは新設の西浦高校野球部が意思を持って肉付けされて補強されて行く様が見て取れます。のほほんとした日常のシーン多いけど、意味のないシーン全然ないよ?
うーん、目的〜意思〜時間への姿勢が明快なんだろうなあ。気持ちいい。
(登場人物のタイプが被るけども、時間の要素に触れずにパズル化して逸脱していったのが「one outs(甲斐谷忍)」だと思う。これはこれで好き)

で、登場人物達がどいつもこいつもいい奴過ぎる。ひたむきで健気な奴らばっかりだ。こんな高校生いないよ!(2回目)いいなあこんな部活!

展開が丁寧すぎて現9巻でまだ3試合、無事終わるのか心配しながら注目してます。


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 独白するユニバーサル横メルカトル 平山 夢明 光文社(2007回顧ベスト10)

収録作:C10H14N2(ニコチン)と少年乞食と老婆/Ωの聖餐/無垢の祈り/オペラントの肖像/卵男/すまじき熱帯/独白するユニバーサル横メルカトル/怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル


ダークファンタジーって言えばいいのかなあ。「セブン」「SAW」の3倍は陰湿で痛々しい世界での叙情的な短編集。仕掛け・奇抜さともバリエーションが豊富で先が読めません。
殺人が織り成す家族物語だった「メルキオールの惨劇」(→log)と方向性は似てますが、陰惨度&緊張度が高くて、読んでる時に顔が変わってます。多分。

好きなのは、殺人鬼がやたら神々しい「無垢の祈り」、涙の物語拷問系「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」と表題作。拷問や惨殺でしか描けない不器用な物語もあると思います。


平山さんのは文庫本になっていない”小説”が多いんで買おうかどうかよく悩んでる。

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 グラインドハウス ロバート・ロドリゲス&クエンティン・タランティーノ (2007回顧ベスト10)

wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9
USA2本立て版を見ました。B級映画パロディ馬鹿騒ぎアクション映画。
プラネット・テラー」は悪趣味ゾンビアクションで「デスプルーフ」はカーアクション&追跡者もの。
引用元になってる映画達を押さえている訳ではないのだけど、「そんな映画12chでよくやってたよね」ぐらいの知識で十二分に楽しめました。

あの手の映画の「パッケージや予告編」の瞬発力をそのまま増幅させて突っ走ったというかなんというか。それでも、カッコイイモノはカッコイイし、熱いシーンは血が滾る(お色気シーンは刺激的だしね)。それがスプラッターになる時もあれば、突然笑いに転化する時もあったりめまぐるしい。
所謂、物語が成功した時の「なんでもいいからおまえら興奮しなさいウーラー」の魔術が炸裂した映画でした。パロディの恰好をした「すげー楽しい映画」そのものです。

劇場も盛り上がってて、デスプルーフのクライマックスからエンディングでは大笑いが起きてました。カートラッセル演じる殺人鬼の異常さと下種っぷりと情けなさが最高。片足マシンガンのラテン姉さんも滑稽でカッコイイ。
日本用の分割版は未見だけども、これをバラバラにするなんて考えられないよ!


↑予告編



!!!! !! 自分映画殿堂入りです

 ヨルムンガンド 現3巻 高橋慶太郎 サンデーGXコミックス(2007回顧ベスト10)

=我は世界蛇。我が名はヨルムンガンド
『フラフラと「矛盾」した事を喋ってもイイのは、数多の職業の中で武器商人だけ』

→武器を憎む少年兵ヨナは武器商人ココの私兵団に加入する。9人は世界を巡り、交渉と抗争を繰り広げる。あとおしゃべり。


ヨルムンガンド 1 (サンデーGXコミックス)

ヨルムンガンド 1 (サンデーGXコミックス)

面白い、楽しい、でもどこかバランスが変という不思議な作品。ちょっと見ないタイプ。主人公チームが武器商人のわりに作者が「武器そのもの」よりも「銃撃」が好きそうだったりするところとか、武器商人のリアリティはあまり気にしてなさそうなところとか。戦争映画に日本マンガが同居してるといった感じ。

「少年兵」ヨナ、女子高生傭兵、「眼帯+敬語+乳+ナイフ+元国連+アフリカ」バルメの造形とか決していい趣味とは言えないのだけども、みんな獣じみた切れ長の目をしてて冴えた台詞を吐く。そんな目をした女子高生いないよ!

(台詞は俳句と作者が書いてるけども)緩んだ日常パートのおしゃべりと戦闘パートのツリ目たちのキメが光ってて、その瞬間瞬間が楽しい。ある意味ロック的といえるんじゃないでしょうか。ムードマンガって言葉を考えたんだけどムード歌謡みたいで嫌だなあ。


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DOPE! 「LIFE」 「GROUP THERAPY」 「AMERICAN APATHY」(2007回顧ベスト10)

マリリン・マンソンロブ・ゾンビなんかのいわゆる打ち込みヘビィロックのフォロワーとされがちなバンド。
食わず嫌いだったけど、聞いてみるとこれが意外と安定にヘビィロックしてた。
ザクザク重低音のリフと口数の多いボーカルが好き。この辺の快楽追求という点ではロブ兄さんやマリマンの上をいってると思います。


わかりやすいワルとエロ。


自分の好みはリフとリズムなんだなあと思った次第。
ボーカルも、リズムを刻むようなのが好きです。
American Apathy
あと、何気に細かい引出しが多くて、アルバムのバランスがいいのも好感触なんです。


やっぱりワルとエロ。肉食系だ。


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セルドウェラー!(とサークルオブダスト) 「CELLDWELLER」「DISENGAGE」(2007回顧ベスト10)

「CELLDWELLER」も「CIRCLE OF DUST」もKLAYTONの一人プロジェクト。ジャンルはゴス+インダストリアルメタルになってるけど、打ち込みロックってざっくりくくっていいと思う。テクノ・ダンス寄りミクスチャーでセンスが世紀末サイバー。って言うと説明終わり(ノ∀`)

こういうのは21世紀の音楽ではないのかもしれないなあ(世紀末は終わったしサイバーパンクも来てないよ!)、なんて思うのだけど、多彩なサンプリングと中低音が心地良くてヘビーローテで聞いてた。次作が今年リリースらしいので直ぐに買う予定。サイバーっていいよね。


Celldweller


!!!! !   youtubeの草ムービーのBGMでちょっと人気あって吃驚